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心理学ワールド 77号 小特集 学生支援と自立のパラドックス 山田 剛史(京都大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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27 小特集 変わる学生,変わる大学 大学を取り巻く状況の変化  大学を取り巻く状況の変化は, 大きく社会,大学教育,大学生の 3つに分けられる。18歳人口の減 少予測に始まり,大学進学率の上 昇,高度情報化,雇用環境の変化 やグローバル化など社会の変化。 質保証や外部評価,予算の縮減や 競争化といった文教政策の推進圧 力に加え,教えから学びへの教育 の在り方の質的転換など大学教育 の変化。そして,目的意識の希薄 化,学習への受動的態度や学ぶ力 を含む広義の学力低下,社会に出 るために必要な力(汎用的能力) の欠如など学生の変化。 大学における学生支援の位置  上述した学生の変化は,学業へ の躓きや人間関係形成の問題を主 訴としながら,不登校や中退,進 路未決定といった形で具現化し, 大学経営の観点からも焦眉の課題 となっている。大学は社会からの 要請に応えるといった使命と,学 生の変化への対応といった現実と の間で様々な対応策を講じること となる。その1つとして2000年代 に入り,注目され多くの取り組み が進められるようになったのが学 生支援である。2017年現在,学 生支援は単なる厚生的観点からの みではなく,学生の学びと成長を 促す教育的機能の1つとして位置 づけられるに至っている。 学生支援の 実態・類型   大 学 に お け る 学 生 支 援 の 実 態 は, 日 本 学 生 支 援 機 構 (JASSO) に お い て 定 期 的 に 把握され,結果 はウェブ上で公 表されている1 平 成25年 度 に 実施された調査 で は,1機 関 内 の支援組織数平 均が5.6であること,より広範な領 域の支援に対応する方向で拡大さ れていること,一方で配置される 担当者の数や組織体制など課題が 残っていることなどが指摘されて いる2  学生支援の領域には,①修学支 援,②学習支援,③学生相談,④ 対人関係支援,⑤メンタルヘルス 支援,⑥キャリア教育,⑦就職支 援,⑧経済的支援,⑨生活支援, ⑩課外活動支援,⑪障害学生支 援,⑫留学生支援が挙げられる。 これらの支援領域を,支援の枠組 み(正課・正課外)と対象(学 習・学生生活)の観点から整理し たのが図1である。近年,多くの 大学で取り入れられているのが右 半分の正課の枠内で展開される取 り組みや上半分の学習支援に関す る領域である。その導入ペースは 著しく,2000年頃にはほとんど聞 くことのなかった初年次教育を実 施している大学は710大学(96%) にも上る。実施割合の高い取り組 み内容として,レポート・論文の 書き方等の文章作法(86%),プ レゼンテーション等の口頭発表の 技法(80%),学問や大学教育全 般に対する動機付け(77%),論 理的思考や問題発見・解決能力向 上(63%)といったものが挙げら れる3。2011年に義務化されたこ ともあり,キャリア教育を教育課 程内で実施している大学も715大 学(97% /同調査)とほとんどの 大学に上る。また,全学生数にお ける障害学生の占める割合は2015

学生支援と自立のパラドックス

京都大学高等教育研究開発推進センター/大学院教育学研究科 准教授

山田剛史

(やまだ つよし) Profile─山田剛史 2005年,神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。 高等教育質保証学会評議員,大学教育学会代議員。専門は青年心理学,高等教育。 著書は『大学生の主体的学びを促すカリキュラム・デザイン』(編著,ナカニシ ヤ出版)など。 図 1 大学における学生支援の類型

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28 ないだろうか6。そのための方法 として教員・職員といった大人に よる支援のみならず,友人や先輩 といったピアによる学生支援(ピ ア・サポート)も有効である7 文 献 1 大 学 等 に お け る 学 生 支 援 の 取 組 状 況 に 関 す る 調 査(http:// www.jasso.go.jp/about/statistics/ torikumi_chosa/index.html) 2 独立行政法人日本学生支援機構 (編)(2014)学生支援の最新動向 と今後の展望. 3 文 部 科 学 省 高 等 教 育 局(2016) 平 成26年 度 の 大 学 に お け る 教 育 内 容 等 の 改 革 状 況 に つ い て( 概 要 )(http://www. mext.go.jp/a_menu/koutou/ daigaku/04052801/1380019.htm) 4 障害のある学生の修学支援に関 する実態調査(http://www.jasso. go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/ chosa_kenkyu/chosa/index.html) 5 ベネッセ教育総合研究所(2013) 第2回大学生の学習・生活実態調 査〈ダイジェスト版〉 6 山田剛史(2015)「青年期の発達 上の課題を踏まえ正課・正課外を 戦略的にデザインを」『VIEW21 大学版(ベネッセ教育総合研究 所)』 1 , 3-5. 7 山田剛史(2010)「ピア・サポー トによって拓かれる大学教育の新 たな可能性」『大学と学生(日本 学生支援機構)』 87 , 6-15. 年度で0.68%(21,721人)となっ ているが4,2016年4月に障害者 差別解消法の合理的配慮規程等が 施行されたことに伴い,今後組織 的な体制のもとで適切に対応して いくことが求められる。 学生支援と自立のパラドックス  大学生の多様化に伴う支援ニー ズの拡大とそれへの対応が不可避 の中,改めて大学という時間,空 間が青年期の若者に与える役割・ 機能について考えてみたい。本 来,大学生を含む青年期後期はア イデンティティの確立や親からの 自立が発達上重要な課題となる 時期である。大学という時空間 は,社会へ出る前の役割実験の 場,様々な経験に傾倒・探索し, 他者(友人や親)との関係を整理 し,社会の中での自己の位置づけ を明確にする場である。  大学教育における共通目標の一 つに「自律的学習者」の育成が挙 げられる。自律的に学ぶことは生 涯学習社会において重要な意味を 持つ。しかし,各種統計を見ても 学生の学習への受動性・消極性は 高まっている。前述のように大学 では補習教育や初年次教育,キャ リア教育の実施をはじめ丁寧な指 導が行われ,学生支援も量的・質 的に拡大している。LMS(学習管 理システム)やeポートフォリオ の導入など,学生支援のためのイ ンフラも年々整備されている。自 律的学習者を育成するために大人 (教職員)が様々な手を尽くすこ とによって,むしろ自立が阻害さ れているのではないだろうか。ベ ネッセ教育総合研究所が2012年 に行った全国学生調査5によると, 学生生活支援について,学生の自 主性か大学の教員による指導・支 援かいずれの考え方に近いかとい う設問に対し,「大学の教員が指 導・支援するほうがよい」と回答 した学生が増加している(2008 年の15.3%から2012年の30.0%へ と倍増)。同調査では,保護者と の関係についてもきいているが, 年々依存度が高くなってきている (図2)。また,男性の伸び率が大 きく,性差はほとんどなくなって きている。 発達を促す学生支援  大学は学生が社会に出るため, 出た後にタフに幸福に生きていく ための支援を考えなければならな い。保護者との依存的関係を持 続・肩代わりする形での学生支援 は,自立を抑止しかねない。手取 り足取り行う支援は,学生の試行 錯誤を抑制したり失敗から学ぶ経 験を減じさせたりする。  大学生の発達の最近接領域を見 極めた上で発達を促すための足場 かけ(scaffolding)を提供するこ とが学生支援の最適な在り方では A 保護者のアドバイスや 意見に従うことが多い なにごとも自分で決めることが多い 困ったことがあると, 自分で解決する お金が必要になったら, アルバイトなどをして 自分で準備する 2008年 2012年 4.5 7.7 38.2 5.8ポイント増 7.2ポイント増 5.6ポイント増 38.7 15.4 A どちらかというとAに近い B =4,070(2008年),4,911(2012年) どちらかというと Bに近い 35.6 40.2 19.7 6.4 9.1 39.9 37.9 13.1 35.4 42.7 15.5 13.9 18.5 45.9 25.3 10.3 44.9 27.4 13.8 2008年 2012年 2008年 2012年 困ったことがあると, 保護者が助けてくれる お金が必要になったら, 保護者が援助してくれ る B (%) 図 2 大学生の保護者との関係5

参照

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